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NY市の委託先、コバンタ社の焼却炉見学へ


華麗なる?!NY通信★強制メルマガ★2008.7.26
ばっきー&イヤミーが、見た、着た、買った?&食った!!!     その74
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74:NYごみ処理事情  その3
   NY市の委託先、コバンタ社の焼却炉見学へ
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NY市が、焼却炉と埋立処分施設を持たないことにしたのは、
前回報告のとおりですが、
だから処分しなくていいわけではもちろんありません。

たとえば、マンハッタン区の一般廃棄物(家庭から出るごみ)は、
民間の廃棄物処理会社に委託し、
対岸のニュージャージー(州)にある焼却施設で処分しています。
この民間施設の見学に行ってきました。

NY市の清掃局がすべてアレンジしてくれて、
車で送ってくれるというツアー?になり、
そのこと自体にびっくりしながら出かけました。
(東京都とかだったら絶対にありえないと思います・・。)

マンハッタンの真ん中から川底トンネル?を抜けて、約30分程度。
この施設に橋渡ししてくれた前出のムッチ局長は、
『マンハッタンに施設をもつのはいやだというけど、
対岸の30分のところに大きな焼却炉はあるんだ、
でもみんなマンハッタンになければいい、ということだね』
と苦笑いしていました。

NY市の委託先、コバンタ社の焼却炉見学へ_d0143839_12441025.jpg

さて、この施設・・でかい!です。
アメリカには全米だけでなく世界に進出している、
ウエイスト・マネジメント社などに代表される大手廃棄物処理会社が結構あります。
このニュージャージーの焼却施設は
コバンタ・エナジー(covanta)という会社の施設で、
やはりこの会社も全米に焼却施設や埋立処分施設をもつ大企業です。

で、ここニュージャージーの施設は、
なんと、日量2700トンの施設。

まだまだ土地が余っているような敷地具合なので、
現場では大きく感じませんが、言うまでもなく日本にはない大きさです。

たとえば、東京には都の比較的大きな焼却炉がありますが、
せいぜい600トンくらいで大きい方・・新しい横浜や千葉の施設でも、
まあ1000トンが最大クラスです。

会社名からもわかりますが、
あくまで焼却による廃熱発電をする施設という位置付けで、
発電し、売電しています。
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蒸気を売ることについても聞いたところ、
本当は蒸気のほうが高く売れるのでそうしたいが、
設備が難しいとのこと。
ほんとに、いずこも同じです。
特にここは、工場地帯ながら、隣接する工場までの距離もかなりあるし。
しかし、蒸気を運ぶことについては、
新しい技術があれば・・と模索中で、近年中にそうしたいと話していました。

さて、案内してくれたのは、広報部長ハンク氏(広報だけでなく、運営企画部長みたいな感じ)と、この施設の技術のトップ(工場長という感じ)、マイク氏です。
この人選にまたびっくり。
やはり、NY市からの紹介ということが大きかった、と思っています。
感謝。

以下、順不同ながら簡単な報告と、
私的なサプライズ&納得をまとめておきたいと思います。
(そのうち機会があれば詳しく・・)

1.施設の設置許可について
①許可のプロセス、大変さは同じ!?

ここで焼却しているのは、NJ州の許可上、
タイプ10と言われている、一般家庭から排出される廃棄物にあたるものです。
NY市から受託しているのも、
だから一般ごみだし、このほか近隣の自治体からも一般ごみを受け入れています。
ここでは詳しく書きませんが、
廃棄物は大きく8種類に分類されています。
(番号は順ではないので、8種類だけど、タイプ10がある)
施設の設置のときに、
どのタイプのごみを燃やすか、申請し、
許可を得なければなりません。
分類表や許可証もみせてもらいました。(コピーもいただきました!)

この許可を得るには、やはり3年から長いケースでは7年かかるそうです。
ちなみに、この施設は建設許可がおりるまでに4年弱かかったそうです。

住宅街からの距離などの規制はありませんが、
それ以前にいわゆる都市計画上のゾーニングがかなりしっかりしていて、
こうした施設を建てていい場所はあらかじめきまっています。

その上で、計画段階で、
交通量の調査や環境影響の調査、いわゆるアセスメントを行い、
近隣のコミュ二テイに周知(新聞でパブリックコメントの募集などを行う)
しなければならないのも日本と同じ・・。
ついでに後述しますが、反対されるのも日本と同じ・・・。

アセスの結果が悪い場合や、
コミュ二テイとの意見調整ができずに、
計画が頓挫するケースももちろんあるそうです。

ただ、この施設のように、いわゆるタイプ10(家庭ごみ)を処理する場合、
設置する場所の周辺、
要は近いところの一般ごみを燃やすことが前提で計画がスタートするため、
基本的には協力的だし、迷惑だけど必要だという認識もあるそうです。
また、地域のための施設であるため、
コミュ二ティが費用を供出(補助金ですね)するケースも多いそうです。
ここはNJ州のエセックスというところにあるのですが、
この郡(日本的には区か大きめの町)が補助金(イニシャルコストの補助)を
出してくれています。
もちろん、この地域の家庭ごみを処理することが条件です。

そう考えると、このタイプ10というごみを処理する施設の場合、
民間がみずからマーケットリサーチして計画するというより、
むしろ、地域のごみを処分する施設を、民間につくらせている・・という
民間委託のひとつの形だなと思いました。

技術のトップマイク氏は
『こういう大型の施設は、かならずこれだけ(2700トン)ごみが集まる、
という確約がなければ建てられない』と言いました。

日本には、一般の家庭ごみを処理している民間の施設はほとんどないのが実情です。
(千葉の寄居くらい?)
しかし、しつこいですが、
これからは、官・民で仕事を分ける発想から脱却し、
使える施設(比較的新しい施設)と、
排出される廃棄物の量を勘案して、
適正な役割分担をしなければ、無駄な施設ができることになりかねません。

このNJの施設のような形で、
大型の民間施設をいくつかのコミュニティで利用するようなことも考えなければならない、
と思います。

②欠格要件

ところで、日本の廃棄物処理法には、
この事業における欠格要項というのがあります。
あまり知られていないと思いますが、
この業を行ってはならない人の条件がある・・と言えばわかりやすいでしょうか。
禁治産者がだめなのはともかくとして、
暴力団関係者には、業の許可はおりません。
そういうひとが役員にいるのもだめです。

こういうことがあらかじめ法律で決まっているのは珍しいかと思いますが、
なんと、NYでも、バックヤードをかなり調べられるそうです。

もちろん、今回見学したような大企業の場合、
もはや、そういうことはありませんが、
収集運搬などを始める場合などは、マフィア系じゃないことは非常に重要だそうです。

それで、名前がイタリア系だったりすると、
ほかと比べて許可が出るのに非常に時間がかかったり、
場合によっては許可がおりないこともあるそうです。

ちなみに、『ソプラノ』というドラマをご存知でしょうか?
アメリカでかなり人気だったドラマですが、
実は、ニュージャージーで、
廃棄物処理業を営むイタリア系マフィアファミリーの話なんです・・ははは。

で、埋立処分場に死体をごみと一緒に埋めたりするシーンが・・出てくるそうですよ。
実際、NYを中心としたエリアでは、
ごみの仕事はイタリア系マフィアが多かったのだそうです。
現在は、収集運搬はともかく、
焼却施設などとなれば、
アメリカも日本以上に大型化していて、
環境規制も厳しいため、大企業しか参入できないようですが・・。

2.施設

①とにかくでっかい箱・・ストーカ炉

2700トン/一日・・そして家庭ごみですから、
まあ、大きな箱で燃やしているという感じです。設備はドイツ製。

炉内の温度は2000Fから1550F・・・つまり 800℃程度ですね、
で変動していて、
やはり家庭ごみなので温度が下がった場合は、
灯油で助燃しています。

排出ガスは電解しているそうで、
3つのセクションとを仕切る4つのフィルターを通って排出されます。
Electrostatic precioitatorと言っていましたが、
電解する箱とバグフィルターに近いもの(マイク氏の説明)との
抱き合わせのような設備でした。
4つのフィルターを通って排出されます。(私も帰国後に詳しい人に聞いてみますが・・)
これで、90%まで除去できるそうです。

フローはこんな感じ。
NY市の委託先、コバンタ社の焼却炉見学へ_d0143839_12175736.jpg


ちなみに、ボイラーの出口でNOX,SOX,HCL、
出口ではCL,O2、温度をモニターしているそうです。
写真は中央制御室とモニター。
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排出ガスは、1時間平均を自治体に届けるそうですが、
開業から10年間は自動的に
モニターされていたそうです。
しかし10年目に、これまでもよくやっているから、
ということで、自治体のモニターは撤去されたそうです。
・・・ふむふむ、どっかでも聞いた話。

数値が10%以上超えた場合、役所に電話することが義務付けられていて、
事態の改善が見られない場合は、改善命令や罰金があります。
抜き打ちで役所がくることはけっこうあるらしく、
この施設は20年目に入っていますが、
この数値に関しては優秀なのだそうです・・・うーん。。。
炉前はこんな感じです。
NY市の委託先、コバンタ社の焼却炉見学へ_d0143839_1250291.jpg


②いけていない・・ピット

搬入された廃棄物はまずゲートで重さを量って、
プラットホームに入るわけですが、ここがびっくり。
昔の焼却施設ではないですが、
この施設は、ピットがプラットホーム面より深いプールにはなっておらず、
約2メートル程度しか下がっていないピットに
ごみを押し込むような構造になっています。
NY市の委託先、コバンタ社の焼却炉見学へ_d0143839_1253221.jpg

そこで搬入されたごみは、
まず、プラットホームにおろされ(ひょえー!)、
そこからピットに押し込まれて、
クレーンで焼却炉に入れられます。

絵を描けば一目瞭然ですが・・わかります?(っていうか興味ないよね)
ちょっとびっくりした旨を説明すると、
プラットホームで炉内に入れたら燃え残るような大きなもの
(見た中ではマットレス→日本も布団が大変だけど、
それどころかクイーンサイズのベットマットとか・・)を取り除くことができるから・・
とのことでした。

別の新しい施設では、ダンピングするような施設が多いらしいです・・そうでしょうねー。

いや、ほんとに、このプラットホームの
臭気もさることながら、
粉塵が半端じゃなかったです。
涙と咳がとまらないくらい。
日本でやったら、大変なことになります・・。

ちなみに、ピットは16000トンの容量。
約6日分くらいですね。私が見た日はこんな感じ。
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クレーンは2台、
オペレーションもそれぞれのクレーン用に左右両側にあります。
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③建物の中に入っている施設&建設費

施設は、意外かもしれませんが、すべて建物の中に入っています。
この会社の施設は他も建物に入っているそうです。
これは質問もしましたが、当たり前・・という感じでした。
ただ、このことにより建設費が上がるのは当然で、
20年前で350億円かかったそうです。

そこで、事前のリサーチや、
かならず継続的に入るごみの約束がないとできない・・と
何回も言っていたのが印象的でした。

3.運営体制と資格
①12時間2交代制
現在施設は7人のチームが4つあり、
シフトが組まれているそうですが、
それぞれが12時間2交代制だそうです。

きつい・・と思ったのですが、以前は3交代制だったものを変えたそうです。
理由として技術トップは
『細かく交代すると、なにかあったときに、どっちの責任か、
という責任の所在がわかりにくくなるんだ。
また、やらなければならないことを、次のチームに引き継いだりして、
要は“さぼる“ことが可能になってしまう。
それで、完全に24時間をふたつにわけたら、
それぞれの責任の所在も、やるべきこともはっきりした。』と。
これはなるほどでした。

というのも、オペレーションで中央制御室に入っている人以外は、
比較的離職率も高い、いわゆる作業員で、
ここの特性として外人(ヒスパニックなど)も結構います。
そういうひとたちに責任を持って仕事をさせるためにたどり着いたのだ、と思いました。

この施設で働く人は、
こういう作業員とオペレーター、
管理職や受付も入れて全部で83人!
営業が含まれていないとはいえ・・・どうでしょうか?
私は効率的だなと感じました。(シンプルな設備ですが・・)

②オペレーションの資格『QRO』

QROとはQUALIfied refuse operator。
発電所や廃棄物処理施設の管理責任者の資格です。
この会社では資格を取得する費用は全額補助するそうです。
それも取得のための教材や受講費用もすべて。

こういう資格を会社の費用で取得してやめていく人もいるのでは?と聞いたら

『それはもっと条件のいい職場があれば移っていく。
当然のこと。しかし我々は資格者が必要なので育てている、仕方ないね(笑)』
という答えが帰ってきました。

NY市の委託先、コバンタ社の焼却炉見学へ_d0143839_1259288.jpg

お話を聞かせてもらったオペレーターは、
大学卒業と同時にこの会社に入り、
もう10年になるとのことでした。
ここで、QROも取得したそうです。
仕事は楽しいし、
やめようと思うことはない・・と上司の前でしたが、話してくれました。

4.営業

この会社は全米に施設があるため、
施設ごとではなく、
コヴァンタ社として、営業部隊をもっています。
たとえば、引き合いがあった場合は、内容を聞き、
それに応じて適正な施設を提示して契約をすすめていくそうです。

しかし、おおむね、入札が常識だそう。
先のNY市の一般ごみももちろん入札で、
5年契約でその後は更新していくもの。

処理費用のスタンダードは東海岸は上昇していて、
理由として中西部などと比較すると処理施設が少ないから。
住民の反対も多く環境面の問題もあり、
ここ20年ちかくはこの会社も新しい施設はつくっていないそうです。
(増改築はしている。)

少ない分母なわけですから、当然処理費用はあがっていきますよね。
あるいは遠くへ運ぶことになるわけですから、
いずれにしてもコスト高で、排出者からすると厳しい状況です。

しかし入札は、安定的に安い価格がポイントになるため、
非常に難しいとハンク氏。

採算が合う範囲内で、
かつ、相手が想定している金額内で、
かつライバルに勝つ数字を見定めるのがほんとうに大変だ、と話していました。

現在、この施設は定期的にはいってくるごみで、
ほぼ満室状態!
スポットのものしか入札に参加したり、
引き合いを受けたりはしていないそうです。
価格はここで唯一教えてもらえませんでしたが、
NY市の話や周辺状況から察するに、
だいたいトンあたり、高くて1万5千円、
安いものは1万円くらいかなと思います。
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5.広報がものすごく大事

①『こういう仕事だからこそ、広報が大事なんだ』

今回説明&案内してくれたハンク氏は、
本当にすばらしい広報マンだと、感心しました。
いわば、同じような仕事をしているのですが、勉強にもなった次第です。

広報は、会社の利益を守ることが非常に大事です。
あくまでその上での情報開示。
誤解のないように書けば、
ここでいう利益は真の利益で、
目先の利益に追われてうそをついたりして、
会社がつぶれたりしたら、それこそ本末転倒です。

そこを見極めるのが難しくもあり、大事で、
時には答えないという選択肢も当然あります。

それでも、相手に、真摯に対応している、率直に話してくれている・・
と思われなければいけない・・
彼はこれらをすべて満たしていると思いました。
(答えられない質問も結構してしまったので・・)

当然ながら、住民はこの施設を歓迎していません。
一番近い住宅街まで1キロもないそうです。

この歓迎されない理由は
やはり不安に思われているからであり、
その不安の理由は
『90年代の中ごろまでNYにもニュージャージーにも、
ほんとうにひどい焼却施設がたくさんあって、
今もまだそのイメージがある。
これをぼくらが変えていかなければならないと思っている』と・・・。

私のほうで抱えている住民とのことや、
理解してもらうことの難しさや、
自治体の施設でも裁判になることが多い・・という話をしたら、
お互いの住民たちの不思議な疑問や理不尽な反対、
誤解に基づく行動の例で、大いに盛り上がりました(笑)。
同病相哀れむ・・ちょっと違うか。

『いやあ、設置反対やその後の環境の問題で裁判になるなんて、
訴訟の国であるアメリカだけかと思っていたよ、
ちょっと日本の話を聞いて、どこでも同じなんだと思った、
話が聞けてよかったよ』と・・・。

で、そういうアゲインストなところにいるからこそ広報!
という姿勢は徹底されています。
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まず、見学者通路は広く取ってあり、
カラーラインでわかりやすいし、
見学者には中央制御室も見せるし、
炉前も、もれなく、見せるそうです。

また、施設以外の会社全体がほんとうにきれい。
庭は美しく整備されているし、
模型の置いてある玄関、受付、会議室いずれも美しいです。

『廃棄物処理施設へのイメージが変わるように、より意識している』
という姿勢が表れていました。

②コミュ二テイとの関係
地域との交流もしていて、
住民の見学はもちろん、
学校の社会科見学?など積極的に受け入れています。
また、社員が地域の清掃に参加して、ごみを集めたり・・・
まったく同じ???
そういう貢献で地域から表彰されたりしていました。
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ところで、私が要望した書類が、
帰宅したころにはメール(PDF)で届いていたのには、
またまたびっくり。
通常のアメリカ人の場合・・・とても遅いんですが・・・
いやはや優秀な人はどこでも同じですね。しみじみ。

こんなに大量に書きながらも、
書き足りないことばかりですが、
民間施設の“経営”について考えさせられる1日でした!


                    ###



by nyiyamee | 2008-07-31 13:14 | NYごみ処理事情
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